第48代理事長 田村 恭成

はじめに

「新日本の再建は我々青年の仕事である。更めて述べる迄もなく今日の日本の実情は極めて困難に満ちている。この苦難を打開してゆくため採るべき途は先ず国内経済の充実であり、国際経済との密接なる提携である。その任務の大半を負っている我々青年はあらゆる機会をとらえて互いに団結し自らの修養に努めなければならぬと信ずる。」
第二次世界大戦の敗戦から日本の再建を目指す、公益社団法人東京青年会議所の前身となる東京青年商工会議所の設立趣意書の一部です。2020年は全世界で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、経済活動が一時ストップしてしまいました。緊急事態宣言により、不要不急の外出自粛や店舗への休業要請など我々の生活も激変しました。目に見えない未知のウイルスとの戦いは、先の見えないトンネルにいるような不安を感じるとともに、我々の無力さを痛感しました。その非日常の中で、これまで「当たり前」と考えていたコト・モノが、実は「価値ある」コト・モノであったのだと改めて考えさせられました。東京青年商工会議所設立時と現在の時代背景は異なりますが、「新日本の再建は我々青年の仕事である」という考え方は類似しています。

〇七転八起の会員拡大

2020年12月31日をもって、6名の先輩がご卒業されました。20歳から40歳までという年齢制限により、切磋琢磨してきた仲間との別れが毎年訪れます。過去10年間のデータでは、39名の先輩がご卒業を迎え、49名のメンバーが新たに加わり、残念ながら9名が我々との歩みを止めてしまいました。近年の会員拡大運動が実を結び、2020年は6年ぶりに2年連続30名以上でスタートすることが出来ました。しかし、このまま良い傾向が続く保証はありません。実際に現メンバーの多くが3~5年の間に卒業していきます。その結果、青年会議所運動から多くのことを学ぶにはあまりにも時間が足りません。これは我々だけの問題ではなく、全国の同じ志をもつ青年会議所全体の課題でもあります。その課題解決に向けて、この歩みを止めることなく、様々な世代にも広く青年会議所を知って頂くことが必要です。我々らしく多くのメンバーと互いに良い影響が与えられる関係を築けるよう会員拡大を継続していきましょう。黒磯那須青年会議所の存続のためだけでなく、多くの仲間の熱い思いでこの地域を盛り上げていく化学反応が必要になります。

〇様々な場面で活躍できる人財の育成

現在、人口減少や高齢化、経済格差、環境破壊など様々な問題を多くの国が抱えています。こうした問題を解決する手段として注目されているのが、5GやIoTなどの第4次産業革命と呼ばれる最新技術です。これらの本当の恩恵を受けるのはまだ先ではありますが、決して遠い未来ではありません。しかし、どうしてもこれらの進歩に遅れを取ってしまうのが、使う側の人間ではないでしょうか。たとえどんなに素晴らしい技術であっても、使い方を間違えてしまうと、それは人に危害を加える手段となってしまいます。世界でも複雑化した悲しい出来事が毎日のように起こっています。一方で、我が国ではそのような問題は少ないように感じます。何故なら、古くから我々には、困っている人がいれば手を差し伸べ、助け合える「利他の精神」が備わっているからです。現代の資本主義社会として利益を求めないわけにはいきませんが、利益だけではこの世の中はうまく回りません。自分本位ではなく、自分に関わるすべての人に平等に恩恵が受けられるような考え方を持たなければなりません。
また、近年の人口減少により働き手の確保が難しくなってきました。これからは、性別や年齢、国籍、文化、宗教など様々なバックグラウンドを持つ多様性を互いに認め合いながら、一つの目標に向かっていくことが大切です。更に、新たな価値を創造し、組織の一体感を熟成させて、共存共栄を目指す持続可能性を追求していくことが必要です。人と人とが磨きあえる環境を創ることで、積極的な変化を創造する青年経済人を一人でも多くこの地域に輩出することができます。

〇自然豊かな愛すべき黒磯那須

我々の活動拠点であるこのまちは、花鳥風月を感じさせる大変恵まれた地域です。都心部からのアクセスも良いため、那須塩原市・那須町を合わせると毎年1,000万人を超える多くの方が訪れます。今ではイメージがつきませんが、明治以前は「手にすくう水もなし」といわれるほどの不毛の台地でした。しかし、明治政府の殖産興業政策により那須疎水が整備されると開拓が急速に発展し、今では栃木県北の中心部となっています。そんな不毛の土地を先人達は、不屈の精神で決してあきらめることなく、明るい未来を創造し開拓しました。そんな自然豊かな地域であるが故に、1998年の那須豪雨災害、2011年の東日本大震災、2019年の東日本台風など多くの大災害が発生してきました。そのため、防災に対する意識は高いと思いますが、近年の災害は突発的に発生するだけでなく、急速に被害が大きくなる特徴があります。一つの判断ミスが生命を脅かす危険性が高く、個人レベルでの防災意識の向上だけでは十分とは言えず、行政や関係団体との連携は必要不可欠です。自然の二面性を理解し、地域が一つとなり、自然災害と真剣に向き合っていくことが必要になります。

〇都心部の一極集中から地方分散へ

2019年の栃木県内の人口社会動態では、前年比648人減の3,642人と2年連続で悪化しました。主な要因は、首都圏への人口流出拡大です。那須塩原市は前年の94人の転出から15人の転入増となり、115,839人となりました。市町村別の転入増となった5地域の1つとなりました。那須町は前年の58人から44人の転出に減少し、24,913人となっています。今後の社会は、新型コロナウイルスの影響により、インターネットを使った「在宅勤務」や感染を拡大させないための「社会的距離の確保」など今までには無かった様々な変化に対応することが必要となります。しかし、それは決してマイナスの事ばかりでなく、通勤ラッシュの回避や都心部から地方への移住などプラスの可能性も見えてきました。この地域は、観光地として発展しているため、どうしても県外からのお客様が必要不可欠です。訪れたお客様に対して地域特有のあたたかい「おもてなし」を提供することにより、慌ただしい日常からの解放だけでなく、新たな拠点としてイメージしてもらえるようになります。その結果、「お客様」から「地域の一員」へと変化し、新たな仲間を生むことにつながります。そして、この地域の魅力の再発見につながり、次世代の子供たちも「帰ってきたい」と思えるようなまちに変化し、様々な世代が手を取り、助け合えるそんな素晴らしい地域になっていきます。出会いに感謝すると共に、人と人とのつながりを大切にし、多くの人の笑顔であふれるそんな地域にしていきます。

〇対外に向けた情報の発信

我々の活動は、地域や行政・各団体にどれだけ届いているのでしょうか。どんなに素晴らしい活動を行なっても自己満足で終わってしまっては、本当に地域のためになるのでしょうか。第19回那須野ふるさと花火大会は、新型コロナウイルスの影響により開催が見送られてしまいました。この地域を活動エリアとする青年団体のPRの機会が失われたことは大きな損失です。しかし、この状況は決して後ろ向きなものではなく、新たな開催の形を関係諸団体と模索する有意義で必要不可欠な時間となり、今まで以上に地域の方に楽しんで頂ける事業へと進化させていきます。
2021年は、第70回を迎える全国大会がとちぎ宇都宮大会として開催されます。全国から約30,000名のメンバーがこの栃木県に集結します。メイン会場の宇都宮だけでなく、観光地としても有名なこの那須塩原・那須エリアにも多くの方が来訪されることでしょう。是非全国各地の青年会議所メンバーに、自然豊かな無限の可能性に満ちたこの地域を見ていただきたいと思います。そのためにも黒磯那須青年会議所として様々な手段を活用し、全力でPRしていきます。そして、対外に発信するだけでなく、対外から感じたこと、学ぶべきこともメンバーだけでなくこの地域に還元していきます。

〇結びに

この地に青年会議所が誕生して48年が経ちました。時代の流れとともに「青年会議所しかない時代」から「青年会議所もある時代」へと変化し、この地域のためにと多くの先輩方が「友情・奉仕・修練」の三信条を基に活動してまいりました。世界では、SDGsの取り組みが活発になり、日本もSDGs達成度ランキングでは、15位とポテンシャルの高さを示すことが出来ましたが、課題解決に向けてまだまだ努力していかなければいけません。「誰一人取り残さない」この取り組みは、今後スタンダードとなり、全世界で課題解決に向けて手を取り合い、次世代にバトンを渡さなければいけません。いきなり大きなことを解決しようとせず、少しずつ出来ることから始めましょう。その小さな行動がやがて大きな動きとなり、多くの人を巻き込んでいきます。
本年度は、今までの考えや活動の根本となる「変化させてはいけないもの」を時代に合わせて「進化させる」よう様々な角度から見つめ直し、青年会議所としての存在意義を模索していきます。時間は有限であり、平等に過ぎていきます。この1年間をどのような気持ちで、どう自分を新たな段階へ進化させていくのか明確な目標を持っていきましょう。この状況は、決して「Pinch(危機)」ではありません。我々が進化していく「Chance(好機)」です。そして色々なことに「Challenge(挑戦)」していきましょう。その結果、自分を取り巻く環境が「Change(変化)」していきます。「青年会議所が選ばれる時代」となるよう一人でも多くのメンバーが楽しく、魅力を感じられるような事業を展開して参ります。

最後にこの地域のために様々な事業を展開されてきた黒磯那須青年会議所のOBの皆様、そしてその活動をご支援いただいた関係諸団体の皆様におかれましては、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻をお願い申し上げ、理事長所信とさせていただきます。